選択の日 18日目 理不尽は裁けない

― 邦画理不尽 魚の鮮度は待たない。

今日は月曜日。

私は朝からそわそわしていた。

インディードに三社応募中。
連絡は来るのか。
どこから来るのか。
面接はどうなったのか。

不安で落ち着かない自分を、
どこか冷静に観察している私がいる。

待ちながらパソコンを開く。

クラウドワークスのプロフィールを整える。
私はライターになるつもりだ。

医療記事も書いた。

AIの編集は、
私の思考の骨格を整えてくれる。

娘は眠っている。

回復はまず睡眠。
これは経験則だ。

お金はまだない。

でも、不思議と焦りきらない。

お金は循環する、と私は信じている。


そんな時、
有力候補から労働条件確認のメッセージが届いた。

日曜祝日勤務可。

社会保険の希望を書き忘れた。

まあいい。

私は、いつもどこか一つ抜けている。


午後、娘と邦画を観た。

311の震災後、
家を失いホームレスになった人たちと、
中学生の男女の物語だった。

ホームレスの人たちは
少年を「未来」と呼ぶ。

必死で守ろうとする。

自分たちは壊れてもいい。
未来だけは守ろうとする。

でも少年は、煙たがる。

未来と呼ばれる重さが、
きっと鬱陶しいのだ。

母は男を作って出ていき、

父は言う。

「保険金のために死んでくれ」

暴力は、
父の唯一の会話手段だった。

少女の両親は、
首吊り台を作り、
ライトアップし、
自殺を促す。

町では無差別殺傷事件が起こる。

少年も包丁を持ち歩く。

彼の計画はこうだ。

犯人を殺して社会貢献し、
その後、自殺する。

未来が、
自分で未来を終わらせようとしている。

少年は父を殺し、
堤防に埋める。

少女は自首を選び、言う。

「罪を償ってから結婚しよう」

ラストシーンは、
二人が川岸を走る姿。

救いなのか。
絶望なのか。

わからない。


観終わって、
胸が重くなった。

娘が言う。

「今の日本、三人に一人が貧困なんだって」

求人は山ほどある。

でも、貧困は増えている。

我が家も、その一人だ。

未来と呼ばれる側も、
未来と呼ぶ側も、
どちらも余裕がない。

娘が言った。

「やっぱり田舎で静かに暮らそうね」


今日の新メニューは失敗だった。

映画も、
失敗だったのかもしれない。

でも理不尽は、失敗じゃない。

現実だ。

未来を守ろうとする大人と、
未来であることに疲れた子ども。

私たちは、
どちら側だろう。


夜。

布団に入ってから、
私は何か大切なことを忘れている気がした。

今日一日のどこかに、
取りこぼしがある。

あ。

常ちゃんからもらった
新鮮な子鯵。

裁くのを忘れていた。

明日やればいいか、
と一瞬思う。

でも、魚は待たない。

理不尽も、待たない。

後回しにした感情は、
静かに鮮度を落とす。

冷蔵庫を開ける。

袋の中の子鯵をのぞく。

澄んでいた目が、
少し曇っている。

きれいだったのに。

守れたはずなのに。

もったいない。


理不尽は裁けない。

包丁を入れれば整う魚とは違う。

子鯵も。

映画の少年も。

「未来」と呼びながら
救えなかった大人たちも。

暴力しか持てなかった父親も。

守られたくなかった少年も。

誰一人、
私は裁けなかった。

善悪で切り分けるほど
簡単ではない。

無念だけが、
静かに残る。


袋を閉じる。

今日の鮮度には戻らない。

でも明日は来る。

裁けないものを抱えたまま、

それでも私は
明日を選ぶ。

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