選択の日9日目

選択の日 10日目 猿には勝ったが就活には負けた日

就活とサル

珍しく今日は早起きだった。朝5時。

台所では娘が甲斐甲斐しく朝食を作っている。
フレンチトーストと牛乳が運ばれてきた。

「私、続いてるでしょ?」
「続いてるね」

今では朝の挨拶は「おはよう」ではない。
「続いてる」だ。

今日は散歩コースをどうするか。

私はいつもの海の見える公園ではなく、小高い山を選択した。

就活も同じだ。

検索し、比べ、迷い、決める。

就活は選択の連続作業である。


ミーは猟犬の血が濃い。
山を駆け巡るのが大好きだ。

山道の入り口でリードを外すと、一気に樹木の間を駆け上がっていった。

急斜面もものともせず、朝日に包まれながら頂上を目指していく。

やがて視界から消えた。

何分で戻るだろう。
いや、何十分?
もしかして何時間?

山に放つと、時間は読めない。

——でも、必ず戻ってくる。

私は携帯を取り出し、山の中腹で求人検索を始めた。

そのときだった。

「キーッ!」

猿だ。

一匹ではない。
気づけば頭上は猿の群れ。

私はミーのためにビーフジャーキーを持っている。

まずい。

気づいたふりをしてはいけない。

今の動作を継続する。
それ以外に生き残る道はない。

「ミー!助けて!」

ガサガサという音とともに、ミーが戻ってきた。

すれ違うように猿の群れは去っていった。

私は「ありがとう」と言い、リードをつけて帰宅した。


帰宅後、Indeedを開いた。

保存していた会社を調べ、AIと自己PRを作り、2社応募した。

夕方、不採用。
夜、不採用。

AIは言う。

「ミスマッチです」

私は再び検索を始めた。

良さそうな会社を見つけ、応募しようとして自己PRを読み返した。

そこで時間が止まった。

AIとの会話文まで、そのまま貼り付けていた。

——これは落ちて当然だ。


寝る前、布団の中で今日一日を振り返る。

山では猿の不意を突くことができた。

でも、誤字の不意は突けなかった。

命は守れたが、内定は守れなかった。

ミーは戻る。
会社は戻らない。

笑ってしまう。

選択を間違えたのではない。

確認を選ばなかっただけだ。

就活は選択の連続作業。

山を選び、
会社を選び、
言葉を選ぶ。

そして時には、失敗も選んでしまう。

YouTubeから
「このままでは日本が駄目になる」という声が流れている。

日本の前に、まず私だ。

このおっちょこちょいも、
私の選択の歴史だ。

そう思うと少し可笑しくて、
そのまま眠りに落ちた。

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