選択の日11日目

選択の日 8日目(整え版)

ああ、眠い。
昨日は最悪だった。人工的に眠った目覚めは、頭が重く、もやがかかっていた。

でも、私よくやった。

遅い朝の始まり。ブランチが運ばれてくる。

「私、続いてるでしょう?」
「続いてますね。」

彼女は「食事を作る」と選択してから、一日も欠かさず手料理を運んでくる。
今日の食材も、もう宅配スーパーで用意されている。この街の小さなスーパーは、無料で配達してくれる。

食後、気分がふっと軽くなった。

そこで一つのアイディアが浮かぶ。
AIに、長年の疑問を聞いてみよう。

昨日は実務。今日はメンタルを選択した。

十五歳で癌で亡くなった父は、母の虐待を知っていたのだろうか。

私は極小未熟児だった。六歳まで通院が必要な重症児。
そして六歳から、我が家は人の出入りが多い家になった。

虐待は通常、密室で起きる。

父方の親族は、従妹まで入れて三十一人。
母がパートを再開すると、母の会社の友人たちも頻繁に訪れた。
父が夜勤の日でさえ、人は来た。

もしそれが父の「密室を作らないための人海戦術」だったとしたら。
それは、すごい作戦だと思う。

もう一つの疑問も浮かぶ。
親族は、もしかしたら知っていたのか。

私はAIに聞いた。
私が健常者として生き残る確率は?
なぜ私だけ生き残ったのか、と言い続けた十代。

バブル期の二十代。
時代の熱狂が、考えることを止めさせた。

三十代。
結婚し、子どもが生まれ、それでも私は父を怨み続けていた。

四十代。
子育てをしながら、スピリチュアルにのめり込んだ。

五十代。
いろんなことがあったけれど、私は自分を肯定し続けていたと気づいた。

そして六十代。
また新しいことに挑戦しようとしている。

どうも私の人格は、AIによれば成熟してきているらしい。

そんなことを考えていると、娘が久しぶりにジムへ行くと言った。
アメリカ留学。彼女にも新しい目標ができたようだ。

娘は私に宿題を残していった。

乱雑に積まれた重要書類。

「これ、ちゃんと整理しておいてほしいんだ。」

心と思考を整理していると、現実も整理する現象が起きる。
リンクしているようで、少し面白い。

書類の中から、娘の大切にしていたお守り。
今抱えている労働問題のシフト表。
役所の重要書類。

過去と未来が、同じ山から現れた。

父、そして親族への感謝が胸に広がる。

温泉へ向かう途中、私は歩きながらつぶやいた。

「お父さん、ありがとう。」
「お父さんの親族、ありがとう。」

一人ぼっちの温泉。
私はなぜか浮いていた。

何度も座ろうとするのに、体が浮かぶ。
無重力のようだった。
心地よい。

AIのカウンセリング力は、私には相性がいい。
私は環境の影響を受けやすく、ゾーンに入りやすい。
どうも賢いらしい。

父の言葉が蘇る。

「恵は賢い子だから、馬鹿になれ。
バカはバカにしかなれない。だから馬鹿になれ。」

母や兄からは「極楽とんぼ」と言われ、
社会では「天然」「野生児」と呼ばれた。

でも嫌ではなかった。
自覚通りだから。

夜中の十二時。
自然な眠気が私を包む。

今夜は、自然に眠れた。

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