安心できる介護施設の選び方|看護師の視点
「夜中に急変したら誰が助けてくれるのだろう」
介護施設を探すご家族の多くがこうした不安を抱えています。料金や立地は比較し易い一方で、医療体制の違いは見えにくいものです。
しかし実際には、看護師の配置状況や夜間対応体制の差が、その後の生活の質を大きく左右します。
安心できる介護施設を選ぶうえで、最も重要なのは医療体制の充実です。特に確認したいのが、看護師の配置状況です。常勤または定期的に看護師が勤務している施設は、体調変化の早期発見と迅速な対応が可能です。高齢者は持病を抱えていることが多く、些細な変化が重症化につながることもあります。
介護士が行える医療行為には法律上の制限があります。たとえば、COPD(慢性閉塞性肺疾患)や気管支拡張症など呼吸器疾患がある方は在宅酸素が必要になることがありますが、酸素流量の調整など医療的管理は看護師でなければ行えません。糖尿病の医療的ケアや爪の専門的処置なども同様です。
次に重要なのが、緊急時の対応体制です。夜間や休日に急変した際、医師と迅速に連携できる体制があるかは命に直結します。24時間看護体制の施設では、医師の指示のもとで注射や点滴、酸素投与などの処置が可能です。
一方、看護師不在の施設では対応が限定されます。高熱時のクーリングや血圧低下時の応急対応はできますが、脳梗塞や心筋梗塞など重大な疾患の初期症状は見逃されやすく、対応の遅れが重症化につながることがあります。
私が関わった80歳代の入居者は肺炎を繰り返していましたが、日常的な観察と医師との連携により軽度の段階で発見でき、施設内治療のみで回復しました。もし夜間看護師がいない施設であれば、入院が必要になっていた可能性があります。呼吸器疾患を抱える高齢者は、本来であれば安静を優先されがちです。しかし、歩行が可能な方のADLを過度に制限することは、身体機能だけでなく生活意欲の低下にもつながります。
安全を守りながら歩行を継続することこそ、看護の難しさであり、専門性が問われる場面です。
さらに、肺炎をきっかけに在宅酸素が必要になると、多くの施設では受け入れが難しくなり、転居を余儀なくされることもあります。これは本人にも家族にも大きな負担です。
介護施設を選ぶ際は、料金や立地だけでなく、以下の点を必ず確認しましょう。
・看護師は常勤か、24時間体制か
・夜間の緊急対応フロー
・提携医療機関との連携体制
・持病への対応実績
施設選びに迷うのは当然です。しかし、医療体制という基準を持つことで、不安は具体的な確認事項へと変わります。
遠慮せず質問し、納得できる説明を受けられるかどうか。
それが安心への第一歩です。
施設看護という静かな医療現場
ある80歳代の女性が、気管支拡張症のため当施設に入居されました。
それまで入居されていた施設には夜間看護師がおらず、救急搬送で対応する体制でした。そのため、夜間も看護師が常駐する施設への転居となりました。
70歳代のころの彼女は、とても活動的な方でした。
海外へボランティア活動に出かけるほど、元気に生活されていました。
しかし、ある日エアコンを掃除した際に大量の埃を吸い込み、肺炎を発症しました。
その後遺症として気管支拡張症を患うことになりました。
肺機能は大きく低下し、酸素化も十分に保てない状態でした。
室内を少し移動するだけでも、血中酸素飽和度は80%台まで低下してしまいます。
そのため、夜間の酸素流量の調整は欠かすことができませんでした。
前の施設では、夜間に状態が悪化した場合、救急車を呼ぶ以外に対応方法がありませんでした。
しかし、私たちの施設では24時間看護体制をとっています。
夜間に状態が変化した際には、夜勤看護師が直接対応します。
酸素流量の調整や状態観察を行いながら、急変を防ぐ看護を続けていました。
24時間看護体制のある施設は、決して多くはありません。
しかし、元気なうちは夜間の看護体制が必ずしも必要とは限りません。
多くの方は、日中の介護や生活支援があれば十分に生活することができます。
ただし、病気や加齢によって状態が変化したとき、夜間の医療的対応が必要になる場合があります。
そのようなときに備えて、近隣に24時間看護体制の施設があるかどうかを事前に確認しておくことはとても大切です。
いざ医療的なケアが必要になった際、近くに対応できる施設があれば、比較的スムーズに転居することができます。
施設選びは、今の生活だけではなく、将来の状態の変化も見据えて考えておくことが大切だと感じています。
近隣の夜間看護師不在の施設からも、大変感謝されました。
夜間に医療的な対応が必要になった場合、私たちの施設へ転居することで、安心して生活を続けることができたからです。
私たちの施設は、地域の中で医療的な支えを担う場所でもありました。
施設同士が連携することで、入居者の方がその時の状態に合った環境で生活できる。
そのことの大切さを、私は現場で何度も感じてきました。
施設看護とは、
日常の中で小さな変化を見逃さず、
静かに命を支える仕事なのだと感じています。
